研究者のつぶやき

北米で研究をしていた研究者のサブブログ。独自ドメイン試用中

論文の書き方

学術論文は何語で書いてもよいが、より多くの人に読まれるためにはやはり世界の公用語たる英語で書かなければならない。本当は何語で書いてあっても、その内容が素晴らしければ経典が翻訳されていったように誰でも読みたくなるものかもしれないが。

 

英語を母国語としない我々日本人研究者にとって、英語で論文を書くというのはそれだけでハンディキャップに感じられる、少しハードルの高い作業である。最初から英語で書くか、それとも日本語で書いて英語に訳するのか。どちらが良いのだろうか?

 

 

自分は大学院生の時まではまず日本語で書いていた。論文の書き方も全く知らなかったので当然といえば当然か。教官に指導してもらったり (1歳しか違わないのだが、回り道+医学部+研修医を経た自分と、工学部から大学院を経て助教になった先生とは研究の経験値が全然違った)、いろいろなサイトを見たりして、書き方を習得していった。

 

英語で書き始めたのは院を出て最初の症例報告を書いたとき。症例報告は書式が決まっているし書くことも限られているので、単語だけ調べれば良かった。

 

その時は論文校正は業者にお願いした。ちゃんとした英文 (何だその上から目線)になって返ってきた。症例報告1報で1万円くらいだったので、リーズナブルだと思う。症例報告やちょっとした臨床研究ならそこで十分すぎる程じゃないかな。話が戻るが大学院の時の論文は、ボスのコネを使って当該分野の専門家に校正してもらった。今使っている論文の文法はそれが基礎になっている。かなりいい文章になって返ってきたので、ちゃんと書きたい論文はそういった専門家を頼るのがいいと思う。業界の専門用語もあるし。場合によっては、安価な校正サービスでいったんラフな校正をお願いしてその後専門家、という二段階校正もアリかもしれない。

 

基礎研究の論文は、イントロで今わかっていることとわかっていないことを明らかにしてその研究を行うことにした経緯を説明し、メソッドで使ったサンプルや方法を述べ、結果を羅列して考察を進める。いずれも論理性が最重要で、(本当は)英語とか日本語の問題ではない。いまは英語環境にいることもあり、日本語を英訳するのが面倒なので最初から英語で書いている。もちろんネイティブが書いたほうが圧倒的に説得力のある英語になるので、留学中のラボでは同僚のネイティブが校正を担当していた。

 

書きながら思うのは、もっと中学高校で英語 (英文法)をちゃんと勉強しておけば良かった、ということ。恥ずかしい話だが本当に英語に興味がなかったので、関係副詞何それ、という状態でこっちに来た。海外行けば何とかなるだろうと思っていたが何ともならなかった。英会話と書き英語は全く違う。伝えたいという熱意は必要だが、それだけでは多くの人に読んではもらえない。伝える技術として、正確な文法というのは最低限必要なものである。

 

勉強勉強。

2年間の研究留学を終えて

前回記事と話が若干前後するが、2年間の研究留学を終えて帰国した。

 
 
研究成果としては筆頭著者 (の1人)として論文1報 (PLoS One), 共著者 (3rd author)として論文1報 (Sci. Rep.)をPublish. IF的には10くらい増えた感じ。あと2つ書く予定で、うち1つは執筆の最終段階に入っていて、もう1つは年内に投稿予定。
 
 
 
正直、時間は全然足りなかった。せめてあと1年、いや半年でもあれば、未出版の2つをもっといいデータで形にできたかもしれない。最初の2報は実験技術として元々自分が持っていたものを、ラボで既に走っていたテーマに加えたものなので、そこまで時間を要しなかったが、こちらにきて新たに習得した技術で一定のものを形にするには、技術をモノにしてから2年は欲しかった。
 
最後の2週間は、最初からそうしておけば良かったのではないか、と思うくらい実験に没頭した。本来ならもっと前に出ていたはずのデータ。実験にトラブルがあってようやく解決したのがこのタイミングだったのもある。家族には迷惑をかけたが、この2週間で出したものが3報目の論文の主要なデータになるので、できるだけ早く形にしたい。
 
 
 
ボスからは、PIとポスドクとしての関係はこれで終わりだが、研究仲間としての、メンター・メンティーとしての関係はこれからも続く旨の言葉をもらった。データには厳しかったが、自分の聴覚障害にも配慮してくれ、暖かい環境で仕事ができた。感謝の気持ちしかない。
 
現在もさっそくボス・共著者とメールのやりとりをしている。強烈なプレッシャーをうける日々はまだまだ続く。

帰国を機に新ブログ開設

台風のトリプルコンボに見舞われながらも無事に帰国しました。

やるべきことは山ほどあり、それは追々記事にしていこうと思いますが、9月からの新しい職場に提出する書類仕事が一段落したので、Jet lagの中、ブログ徘徊+更新中です。

 

さて。

新ブログは主に、研究留学のことや、基礎研究と医学臨床を結ぶような交差点としての役割を持たせてみたい。

無料版はてなブログもかなり良いサービスだと思うが、広告の場所などを制御できないことやキーワードリンク等がリーダビリティを若干損なうのではないかという思いも少しあった。自分の本当に書きたいことを書く、また将来的にひとつの情報発信のチャンネルにしたいという思いもあり、帰国を機にはてなブログProに登録することにした。

まずは1か月、試しに登録してみて、感触が良ければ2年契約にしようと思う。ダイアリーPlusからのアップグレードなので、そこまで金額的には変わらない。

 

余勢を駆って、独自ドメイン取得までしておこうかと画策し、まずはこちらで感触を調べてみることにする。

 

帰国後は本業が忙しくなる。これまで忙しくなかったというわけでは決してないが、時間の使い方、拘束され方が全く違うので、正直自分でもどうなるかわからない。研究者はアーティストであり個人事業主であるので、自分の時間はほぼ自分でコントロールでき、プライベートな時間に干渉されることはない。その分、結果だけが要求されるシビアな世界で、帰国直前の追い込みの時期は治ったと思っていた胃痛が再燃するなどストレス値は高かった。

一方、自分の本業である医師の業務は完全にプライベートのない世界。もちろん終業後や日曜などで病棟業務を同僚にお願いできる日は若干の自由時間を過ごせるが、電話がかかってくる可能性は24時間365日常にある。

研究者としての仕事も続けようと思っている*1ので二足のわらじを履くことになり、自分ひとりで趣味その他のために使える時間はかなり限られてくる。バス通勤から車通勤になることもあり、ブログを書く時間も以前の1/3以下になるかもしれない。それでも、自分のなかで1年以上続いたこと、そしてそこから広がる世界があったことは事実なので、三日坊主以下の汚名を返上すべく続けていきたいと思っている。

*1:研究費が取れたら・・・